
人にはなかなか言いづらいけど、効果が抜群だからやめられない。そんなダイエットが密かに広まっていることをご存知でしょうか。実は、近年下剤を使った下剤ダイエットの問題が取り上げられています。
手軽に体重を減らすことができるため、試す方が多いのですが、リスクを知らずに行ってしまうため、下剤ダイエットにより体調を崩してしまう方も少なくないのが現状です。
下剤ダイエットは確かに効果がありますが、方法やリスクを知らずに行うことは絶対にやめましょう。そこで、下剤ダイエットを行う前に知っておくべき情報を詳しくご紹介していきたいと思います。
下剤ダイエットとは
下剤ダイエットとは、下剤を服用して強制的に便を出して体重を減らしたりお腹を凹ませたりするダイエット方法です。下剤は、通常便秘症の方に向けて開発されたものですが、ダイエット目的に使用する方も少なくありません。
しかし、下剤は薬で強制的に作用するものなので、使用方法を間違えると身体に悪影響が出ることもあります。下剤について正しく知ることで、リスクを少しでも減らしていきましょう。
下剤の種類について
下剤とひとくちに行っても効き方や飲み方は違いがあります。それは、下剤にはさまざまな種類があるからです。
下剤の種類は大きく分類すると刺激性下剤と機械性下剤の2つにわけられ、さらに細かく分類していくこともできます。それぞれ詳しく見ていきましょう。
刺激性下剤について
刺激性下剤とは、大腸または小腸に刺激を与えることで腸の蠕動(ぜんどう)運動を引き起こす下剤のことを言います。大腸を刺激する下剤には、アントラキノン系のものと、ジフェニルメタン系のものがあります。
アントラキノン系の大腸刺激性下剤は、アントラキノンという成分が大腸の粘膜を強く刺激して蠕動運動を促します。服用すると、約6時間~18時間のうちに効果を発揮します。
下剤としてよく聞く、センナ、大黄、アロエ、センノシドエキスなどから作られた薬剤が含まれているため、慢性的な便秘症の方にも効果があります。
ただ、長期間アントラキノン系の大腸刺激性下剤を使用し続けると、腸の粘膜が黒ずんで便秘が重症化し、大腸黒皮症(または大腸メラノーシス)を引き起こす可能性があるので注意が必要です。
ジフェニルメタン系の下剤
大腸を刺激する下剤として、もうひとつジフェニルメタン系があります。
ジフェニルメタン系の大腸刺激性下剤は、比較的新しい薬剤として扱われており、アントラキノン系に比べると、腹痛などの症状が引き起こされにくいため、身体への負担が少ないとされています。服用すると、約7時間~12時間のうちに効果を発揮します。
小腸に刺激を与える下剤
刺激性下剤の中には、小腸に刺激を与える物もあります。大腸刺激性下剤に比べると副作用が少なく、食中毒の可能性がある時に使用されることもあります。
小腸刺激性下剤としては、ヒマシ油があります。服用から約2時間~6時間の間に効果を発揮するでしょう。
ただ、ヒマシ油は骨盤周辺の血管に作用し充血を引き起こすことがあるため、生理中や妊娠中には服用しないようにしましょう。また、長時間使用し続けることで身体に必要な栄養を充分に摂取できなくなることがあります。
機械性下剤について
機械性下剤とは、詰まって硬くなっている便に水分を加えて柔らかくしたり、便のかさを増やしたりして、排便しやすい状態にする下剤のことです。
刺激性下剤に比べると、副作用が少なく刺激も弱いため、長期間使用しても問題が起きにくいと言われています。機械性下剤は、膨張性下剤、湿潤性下剤、塩類下剤、糖類下剤、坐薬に分類することができます。ひとつずつ見ていきましょう。
膨張性下剤について
膨張性下剤は、腸の中で水分を吸収して膨らみ、便のかさを増やすことで大腸が刺激され、便通を促してくれます。
服用から約12時間~24時間で効果を発揮してくれるでしょう。
寒天や小麦のふすま、プランタゴ、オバタ種子などが含まれています。たくさん飲みすぎてしまうと、膨満感が強くなってお腹が苦しくなることもあるので注意が必要です。
湿潤性下剤について
湿潤性下剤は、界面活性剤の作用により便を柔らかくし、便の表面を滑らかにして腸壁に引っかからずにスムーズに排便してくれます。
副作用は少ないとされていますが、その代わり湿潤性下剤だけでは下剤効果があまり出ないことが多いため、刺激性下剤と併用して服用されることもあります。服用から約1日~2日で効果を発揮してくれるでしょう。
塩類下剤について
塩類下剤は、便に含まれる水分が失われないように作用するため、便が柔らかいままの状態で排出しやすくしてくれます。また、大腸内の水分量を増やしてくれるので、便の滑りが良くなるでしょう。
服用から約8時間~数日で効果を発揮してくれます。
副作用が非常に少ないため、赤ちゃんや妊婦にも使用されている数少ない下剤のひとつです。ただ、マグネシウムを含み塩分が主成分となるため、腎臓が弱っている方は控えた方が良いでしょう。
糖類下剤について
糖類下剤は、腸内の水分量を増やして便を柔らかくし、排出しやすくしてくれます。胃腸で吸収されにくい糖分が含まれており、Dーソルビトールや麦芽糖などが入っています。
服用から約1時間~3日の間に効果を発揮してくれるでしょう。
副作用が少ないため、乳幼児や手術後に使用されることもあります。ただ、糖分を多く服用することになるので糖尿病を患っている方は控えた方が良いでしょう。
坐剤について
坐薬は、肛門から挿入する下剤のことです。一般的には座薬と表示されることもあるでしょう。肛門から直接挿入するので、ダイレクトに腸を刺激することができ、排便を促しやすくなります。
乳幼児など薬をうまく服用できない場合や、嘔吐を繰り返している場合でも、坐薬を使用すればきちんと効果を発揮することができます。ガンコな便秘症の方は、坐薬と内服薬を服用して即効性を求める場合もあるでしょう。
下剤を使用してはいけない場合
下剤には、このようにさまざまな種類があることがお分かりいただけたと思います。それぞれの種類によって、効果の現れ方や使用方法は異なります。ただ、全ての人が下剤を使用できるというわけではありません。
生理中、妊娠中、授乳中、腎臓が弱っている方、肝臓が弱っている方、急性虫垂炎を発症している方などは、下剤を使用できないことが多いので、必ず確認してから服用するようにしましょう。
下剤ダイエットは危険! 副作用について
下剤には、さまざまな種類がありますが副作用の現れ方も種類によってさまざまです。食欲不振に陥ったり、吐き気を催したり、ひどい腹痛に悩まされたり、発疹やお腹の張りが続く場合もあるでしょう。
中でも怖いのは、脱水症状を引き起こしてしまうことです。下剤を使うと、腸内に滞っている便だけでなく水分も一緒に排出してしまうため、身体に必要な水分まで失われてしまうからです。下剤を使用したときは、いつもより多めの水分補給を心掛ける必要があるでしょう。
便秘が悩みで下剤ダイエット?
下剤ダイエットを試みようと考えた方は、慢性的な便秘に悩まされていることがほとんどです。ただ、便秘ならどの下剤を飲んでも効果があるというわけではありません。
どのような理由から便秘になっているのか、原因を突き止めなければ本当に効果のある下剤を選ぶことはできないでしょう。
不必要な下剤を飲み続けていると、副作用が強く出たり身体に大きな負担が生じたりする可能性もあるので、自分の便秘が何により引き起こされているのか、しっかり把握しておくようにしてください。
便秘の種類について
ひとくちに便秘といっても、その原因はさまざまです。便秘の種類としては、弛緩性便秘、痙攣性便秘、直腸性便秘に分けることができるでしょう。
弛緩性便秘
弛緩性便秘は、簡単に言うと腸の筋肉が衰えて蠕動運動が鈍くなっている状態のことを言います。腸の蠕動運動が鈍いため、便が滞りやすくなり硬くなってしまうことにより便秘が引き起こされます。弛緩性便秘の場合、どの下剤でも効果が現れやすいでしょう。
痙攣性便秘について
痙攣性便秘は、大腸が痙攣を起こしていて便が思うように移動できずにいる状態のことを言います。少しだけ便が出るときもありますが、多くが残ってしまうこともあるので、便秘だと思っていない方もいらっしゃいます。
この痙攣性便秘が原因の場合、刺激性下剤を使用することで、症状が悪化してしまうことがありますので注意が必要です。下剤を使用する場合は、水分を与えて便を柔らかくする湿潤性下剤や塩類下剤、かさを増す膨張性下剤が良いでしょう。
直腸性便秘について
直腸性便秘は、腸の神経が鈍りほとんど動いていない状態のことを言います。蠕動運動も鈍いため、便を運ぶこともできません。直腸性便秘の場合は、刺激性下剤を使用することで、寝ぼけていた腸を呼び覚まして活動を再開させるのが効果的です。
また、膨張性下剤で便のかさを増して腸を刺激するのも良いでしょう。直接刺激する場合は、坐薬や浣腸も効果的です。最初は弱めの刺激性下剤から服用を始め、便秘のレベルに合わせて適切な用量で服用するようにしましょう。
なぜ下剤をダイエットに使うのか
下剤は、ご紹介した通り便秘症を解決するために使用するものです。しかし、ダイエットを目的に下剤を使う人がいるのは何故なのでしょうか。それは、下剤を飲むことで簡単に体重が減り、お腹が凹みやすくなるからです。
下剤を使用することで、腸に溜まった宿便まで排出することができますし、余分な水分も一緒に出すことができるため、むくみも取れてスッキリさせることができます。
さらにポッコリと出ていたお腹まで簡単に凹ませることができるため、安易に下剤を使用してしまうことがあるのです。
下剤ダイエットによる悪影響 注意点
下剤は、便秘を解消するために飲むもので、ダイエット用に作られてはいません。そのため、安易に下剤の服用を続けることで思わぬ悪影響が出てくることがあります。
下剤の服用を続けていると、腸の筋肉や神経が弱まり、自分の力で排便することが難しくなってしまいます。今まで便秘でも何でもなかった方が、下剤を飲み続けてダイエットした結果、下剤なしでは排便できなくなってしまうことはとても多いのです。
特に、刺激性下剤には強い作用があるため、長期間服用し続けると弱い刺激では腸が反応しなくなってしまいます。一度弱った腸の力を取り戻すのは簡単なことではありませんので、ダイエットを目的に下剤を使用するのはやめるようにしましょう。
便秘症の場合は下剤で管理を
ダイエットを目的に下剤を飲むのは身体に良くありませんが、ダイエットにより便秘症になってしまった方の場合、用法や用量を守って服用するのは悪いことではありません。
ダイエットをすると、極端に食事制限をしたりすることが多いため、便秘になってしまう方はとても多いのです。しかし、すぐに下剤を飲むのではなく、水分をしっかり摂ったり、お腹をマッサージしたり、軽い運動をしたりして、それでもダメな場合に服用するようにしましょう。
数回の下剤であっても、強制的に便を排出することには変わりありませんから、できるだけ自然な形で排便ができるように心掛けるようにしましょう。
便秘を無くす生活習慣が必要
ポッコリしたお腹の方や、便秘症の方はつい下剤に頼りたくなりますが、日々の生活習慣を見直すことで、下剤を使わなくても解決することは可能です。
朝起きたらコップ1杯の水分を飲むだけでも腸を刺激して蠕動運動を活発にしてくれます。また、繊維質の多い野菜や海草を食べると、便のかさが増して排便を促しやすくなるでしょう。
1日3回規則正しく食べることで、消化や排便のリズムもつきやすくなりますので、下剤を試す前に生活習慣を見直すことから始めるようにしましょう。
まとめ
下剤ダイエットを始める前に知っておくべきことについて詳しくご紹介しました。下剤は本来、便秘を解決するために服用するものですから、ダイエット目的に誤った飲み方をするのは絶対にやめるようにしましょう。
どうしても下剤を服用する場合は、優しいタイプのものを選びできるだけ身体に負担をかけないようにしてください。下剤に頼らない便秘知らずの身体に改善していくことこそ、本当の意味のダイエットに繋げることができるでしょう。