過食症について知っておきたいこと

過食症について知っておきたいこと

体重や体型を気にしてダイエットを始める方はたくさんいらっしゃいます。しかし、気軽に始めたつもりのダイエットから、思わぬ病気を引き起こしてしまう可能性があることも知っておかなければなりません。

痩せたいという気持ちで食欲を抑え続けた結果、爆発的な食欲を誘発してしまうことがあります。それが日常化すると「過食症」へと発展してしまうでしょう。

「私は過食症にはならないから大丈夫」と誰もが思ってしまいますが、実は過食症はごく身近にあるものです。ダイエットから過食症にならないためにはどうすればいいのか、また過食症を克服するにはどんな治療方法が最適なのか、詳しくご紹介していきましょう。

過食症とは?

過食症とは?

過食症とは、食べたいという気持ちを抑えることができず、ただひたすら大量の食べ物を食べ続けてしまう状態のことを言います。

正式名称は「神経性大食症」と言います。食欲をコントロールすることができないため、お腹がパンパンになっていても食べ続けてしまう病気です。

過食症には2つのパターンがあり、ひとつは絶えず食べ続けてしまう過食症と、大量に食べた後に嘔吐して処理する過食症があります。どちらも身体に大きな負担を抱えてしまうため、早めに対処する必要があります。

過食症の定義について

過食症の定義について

食べ過ぎの後悔や、リセットしたいという気持ちは誰にでも起こるものです。また、大量の食べ物を一気に食べてしまう行為だけでは過食症とは診断されません。

朝食を抜いたり、昼食をあまり食べなかったりすると、夕食に夢中になるほどたくさん食べてしまうこともありますが、これは過食症とは言いませんので、不安になる必要はないでしょう。

過食症の定義は、コントロールできないほど食欲が強くなり大量に食べてしまう行為が繰り返される状態のことを言います。日常的に過食や嘔吐が続いたり、週に2回以上の過食が3ヶ月以上持続したりする場合は、過食症と診断されるでしょう。

過食症になる原因 ダイエット

過食症になる原因 ダイエット

つい食べ過ぎてしまうことはあっても、それが過食症にまで発展するにはさまざまなきっかけがあります。ひとつのきっかけとして多いのが「ダイエット」です。体型や体重を気にしてダイエットを始めると、食べるカロリーが気になり食べることを抑えようとします。

しかし、食べる量を抑えれば抑えるほど食べたい気持ちは膨らみ、やがてコントロールできないほど食欲が暴走し、暴飲暴食へと繋がってしまいます。

やがて、食べた分をリセットしようと嘔吐でカバーしようとし始め、大量に食べては嘔吐する連鎖が繰り返されるようになってしまうのです。

食べすぎた!をなかったことに

食べた分をリセットしようと嘔吐

過食症になるきっかけは、ダイエットを始めてカロリーが気になり、食べた分をリセットする気持ちが関係しているとご紹介しました。しかしこれは、誰にでも湧きあがる気持ちです。

今日は食べ過ぎたなと感じたら、いつもより運動を多めにしたり汗を流したり、次の食事を抑えたりしてリセットしようとするのは普通のことです。

ただ、リセット方法が嘔吐になってしまった時、過食症へと発展する可能性は高くなります。「どれだけ食べても吐いてしまえばなかったことになる」と思ってしまうと、過食症は一気に加速してしまうでしょう。

過食症の原因 ストレス

過食症の原因 ストレス

過食症になるきっかけにダイエットをご紹介しましたが、他にも過食症を引き起こしてしまう原因はあります。

仕事や育児、人間関係などのストレスから過食症を発症する人はとても多いのです。いわゆるストレス食いからリセットしようと嘔吐し、過食症へと発展するケースが多くみられます。また、受験や昇格試験など極度のプレッシャーから過食症を発症する人もいます。

最初はストレスから気を紛らわすための行為が、徐々にエスカレートし、衝動を抑えきれなくなって自分でもコントロールできなくなってしまうのです。

過食症の影響とは

過食症の影響

過食症を発症すると、どんな影響が出てくるのでしょうか。まず、精神面に大きな影響が出てきます。過食を繰り返すことで気持ちが不安定になり、うつ状態を引き起こしてしまうことがあります。食欲を抑えきれなかった自分を責めてしまい、自傷行為や暴力、犯罪に発展することもあるでしょう。

過食症の身体に対する影響について

過食症の身体に対する影響

過食症は、精神的な影響だけでなく身体にも大きな影響を及ぼします。嘔吐を繰り返すことで食道が荒れたり切れたりしたり、過食により肥満となり、脂肪肝や糖尿病などを発症することもあるでしょう。

更に、過食症が長期化すると、不整脈が起きて心臓に負担がかかることもあります。胃酸や腸液に含まれる塩化物イオン、カリウムイオンが嘔吐や下剤により多量に排出されることで、血中電解質と水素イオン濃度のバランスが崩れ心臓に負担をかけてしまうからです。

過食症は、ただの食べ過ぎの病気ではなくさまざまな病気に発展する可能性があることも知っておきましょう。

不妊に繋がる恐れがある

不妊に繋がる恐れ

過食症が長く続くことで、栄養バランスが崩れるため生理が止まってしまったり無排卵となったりしてしまうことがあります。

生理不順が続くのは、過食症によりホルモンバランスが崩れてしまっているからです。このままの状態が続くと、卵巣機能が低下したり着床しにくくなったりするので、不妊につながる恐れもあるでしょう。

また、生理が止まることで骨からカルシウムが溶け出すようになるため、骨粗しょう症のリスクが上がり歯ももろくなってしまいます。さらに、ホルモンバランスが崩れることで、抜け毛や肌荒れなど美容面にも影響が出てしまうでしょう。

過食症の予防方法

過食症の予防方法

過食症を予防するには、無理なダイエットを控えたり、ストレスを溜めこまないようにしたりすることが大切です。特にダイエットで過食症となるケースは多いですから、極端に無理なダイエットは行わないようにしましょう。体重を減らしていきたいなら、1ヶ月に落とす体重は1kg以下にしましょう。

また、1食置き換えダイエットや断食系のダイエットは避け、全体の食事量を少し減らすくらいで3食しっかり食べるようにしてください。

一時的なダイエットは過食症を引き起こしてしまうリスクが高いですが、緩やかに長期間続けていくダイエットは身体の負担も少なく失敗する確率も低くなります。過食症を予防するためにも、無理なダイエットは控え、長期的に継続できるダイエット方法を選ぶようにしましょう。

ゆっくり噛むことの大切さ

ゆっくり噛むことの大切さ

過食症を予防するために、もうひとつ実践していただきたいのが「ゆっくり噛む」という行為です。過食気味な人は、次々と食べ物を口に入れ流し込むように飲み込んでいきます。

噛まずに飲み込むように食事をしてしまうと、脳の満腹中枢が刺激されないため、満腹だと感じる時間がどんどん遅れてしまい食べすぎる結果となります。

それを避けるために、ひと口ずつゆっくり噛むようにしましょう。理想はひと口30回が目安ですので、口に入れたら箸をおき数を数えながら噛んでいきましょう。

柔らかいもの、味が濃いものは30回噛むのが難しいですが、硬い食べ物で薄味なら30回噛むことで美味しさを味わうことができます。しっかり噛むだけでもダイエットになりますので、意識して噛むようにしましょう。

過食症になりやすい人

過食症になりやすい人

過食症は、誰にでも起こりうる病気です。しかし、過食症になりやすい人も中にはいます。強いストレスが過食に繋がることはご紹介しましたが、その他にも過食症になりやすい人の特徴があるのでご紹介しておきましょう。

過食症になりやすい人は、完璧主義者が多くどんなことでも完璧でなければ気がすみません。そのため、ダイエットを必ず成功させなければと無理なダイエットを行ったり、強いストレスを抱えて過食に繋がってしまったりすることがあるのです。

また、自己評価が低い人も過食症になりやすい傾向があります。自分はどうせダメだと自己否定が強いため、マイナス思考が加速して負のループとなり、ストレスが溜まり過食へと繋がってしまいます。どちらも、自分を許せないという気持ちが強いため、気持ちを紛らわすように食べてしまうことが多いようです。

過食症が連鎖することも

過食症が連鎖することも

過食症を発症した人に兄弟姉妹がいた場合、伝染するように過食症が連鎖することがあります。過食症患者が同じ家に2人もいるとなれば、遺伝などが関係していると思ってしまいますが、そうではありません。ひとりが過食症になることで、家族はその人に注目しケアをしようとより丁寧に接しようとします。

しかしそれは、他の兄弟姉妹にとっては心のどこかで不愉快なことになってしまいます。そこで、無意識に自分も同じような状態になれば、家族から注目されると過食症になってしまうことがあるのです。

全ての兄弟姉妹がそうなるというわけではありませんが、母親や家族の愛情を独り占めしたいという気持ちが強い場合や、幼少期のスキンシップの少なさが潜在的に残っている場合は、過食症を発症する可能性はゼロではありません。

過食症になったら

過食症になったら

さまざまな予防方法についてご紹介しましたが、もし過食症になったらどうすれば良いのでしょうか。週に2回以上過食や嘔吐がある場合や、それが3ヶ月以上続く場合は、過食症の可能性があるため相談するようにしましょう。家族や友人など周りの人でもかまいませんし、医師に相談するのもオススメです。

過食症は自分では気づかないことも多いため、周囲が「大丈夫?食べ過ぎてるよ?」と指摘したときに気づくこともあります。

家族や友人だと近すぎて反発してしまうこともありますので、第三者である医師に相談するのが良いでしょう。過食症の疑いがある場合は、精神科に相談するのがオススメです。心の治療を行っていくことで、過食症の原因から改善することができます。

精神科で治療をする理由

精神科で治療をする理由

過食症の疑いがある場合は、精神科に相談してみましょう。なぜ精神科に相談するかというと、過食症は完璧主義や自己否定、ストレスなどから引き起こされているからです。

これらの気持ちを抑えることができなければ、一時的に過食症が止まっても再発してしまいます。気持ちの捉え方や考え方、行動パターンを見直していかなければ、過食症を根本から治療することはできません。だからこそ、精神科で治療を受けることが大切なのです。

精神科と心療内科の違い

精神科と心療内科の違い

過食症を相談するとき、精神科か心療内科、どちらに受診すればいいのかわからないという方もいらっしゃるでしょう。過食症について相談したい時は精神科とご紹介しましたが、心療内科との違いについて、簡単に触れておきたいと思います。

精神科は、心の病気を専門に扱うところですので、過食症などの接触障害、うつ病、パニック障害などの症状がある場合に受診します。

一方、心療内科は基本的に内科扱いとなるため、気管支ぜんそく、胃潰瘍などストレスから引き起こされた身体の病気が起きている場合に受診します。過食症は、精神的な気持ちから引き起こされる病気ですから、精神科を受診する必要があります。

過食症が進行し、糖尿病や不整脈などが起きている場合は、他の科と協力しながら治療を進めていく場合もあるでしょう。

あなたの意志の弱さのせいにしない

意志の弱さのせいにしない

過食症で悩んでいる人の多くが、「自分の意志が弱いからこうなってしまった」と自分を責めてしまう傾向があります。しかし、実際に意志だけで過食症を治すことは難しい部分があります。

自分を責めてしまったり、価値を低く見てしまったりする思考は過食症の土台となる部分です。まずはそこから、考え方を変えていき治療を進めていく必要があるでしょう。

過食症の治療には長い期間を必要とすることが多いですが、結果がなかなか現れないのは、意志が弱いからというわけではありません。

思考回路を変え、脳が身体に与える信号を変えるのには時間がかかるものなのです。諦めず、コツコツと治療を積み重ねていけば、きっと過食症を克服することができるでしょう。

まとめ

過食症についてさまざまな情報を幅広くご紹介しました。過食症は誰にでも起こる可能性のある病気です。ストレスやダイエットなど些細なきっかけで発症することもあります。

ただ、治療できない病気ではないので精神科に相談し、過食症だと自覚するところから始めていきましょう。過食症について理解を深めることで、予防や治療に役立てていってくださいね。